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日本放送協会とぼく。

日本放送協会という団体があります。略して"にほきょ"。違います。NHKです。
NHKは、みなさんの受信料で運営されています。
受信料は、口座振替などでも支払えます。わたくしも、口座振替で偶数月に引き落とされています。
が、たまたま、引き落とし口座に残高が不足していた月があった。そういうことが二回ほどあった。
二〇〇九年の八月と十月のことだ。
NHKからは、振り込み用紙が送られてきた。私は無視した。
その後、また残高不足で引き落とせないことがあった。そのときは、後日、引き落とされていた。
なるほど、それなら、そのうち、前のぶんも引き落とすのだろう。そう考えた。
振り込み用紙は、その後も届いた。最後に届いたのは、先週だ。
最後というのは、英語のラストのように、最新の、という意味ではない。もう来ないのだ。
なぜなら、その二〇〇九年の受信料を支払ったからだ。
昨日の日曜日の昼さがり、専用端末をたずさえた青年がドアを叩いた。徴収員だった。
現金がない、と言うと、クレジットカードや、デビットカードでも対応できるという。
それなら、と銀行のカードを専用端末のスリットに通した。二度ほど、読み取りに失敗したが、端末は磁気情報を読み取り、徴収員は、テンキーで暗証番号を打ちこむよう促して、それを見てませんよ、というかんじでそぽを向いた。
かくして、ゼロ年代からの日本放送協会の悲願は果たされた。おめでとう。よかったね。
正直なところ、予想外の出費を強いられた感があり、落胆していると、徴収員が、
「どうして、このときだけ払ってなかったんですか?」
と、さわやかにたずねてきた。
「給料の口座と引き落とし口座が別なんで、振り込みと引き落としのタイミングが合わなかったんじゃないかな」
「ああ、なるほど」
もちろん、それだけではなく、積極的に受信料を払いたい気分になれない理由があった。
「あのう、実をいうと、テレビがないんだよね。というか、壊れて、それっきりで」
「いつからですか?」
「ずーっと。だいたい、地デジ契約だってしてないし、衛星も契約してない。つまり、受信しようがない。ラジオはよく聴くんだけど」
「えーと、テレビの他のワンセグが見られるものも?」
「ないね」
「それじゃあ……」
と、彼は受信契約解除の説明をしてくれた。
NHKに電話して、受信設備がないことを申しでて、郵送される書類に記入すれば、契約が解除できるかもしれない、という。
かもしれない、というのは、判断するのは、彼のいるセクションではないからだ。
まあ、たしかにそんなものだろう。
また、テレビがなかった時期の受信料が戻ってくることはないだろう、とも言った。
まあ、それもそんなものだろう。
地デジ化のあと、契約を解除する老人が増えている、という記事を読んだことはあった。しかし、具体的な手段は、わからなかった。ゆえに、惰性でそのままにしてきた。
さらば、受信料。心は踊った。
で、今日、NHKに電話してみた。
自動対応の録音された女性の声で、要件がこれこれなら何番を押して下さい、というアナウンスが流れた。
ホームページからも申し込みができます、とも言った。
口べたな私は、なんかそっちのほうがいいな、と思い、タブレットNHKのサイトを開いた。
受信契約解除という項目は、トップページにはなかった。何度かスクロールして、右上に小さな文字を見つけた。"受信料"。
リンク先は、新規で受信契約をしたり、住所変更をするためのページだった。
ここにも、契約解除の項目は見あたらない。
ふと、右のほうにある、"ワンセグ"という文字が目に入った。妙に気になって、クリックしてみた。
開いたページには、ワンセグの受信にも受信料が発生する旨が記されていた。
昨日、聞いたとおりだ。
現在、受信できるテレビはないし、ワンセグの見られるものもない。
以前はあった。
WILLCOM03というスマホの先駆的携帯電話を使っていたことがあり、ワンセグ機能もあったのだが、ほぼ機能不全状態で、今や起動すらしないだろう。
もうひとつ、PCに接続して使うワンセグチューナーがあった。これは、ひょっとするとまだ機能するかもしれない。が、PCがない。
愛用のノートPCが起動しなくなって以来、もっぱらタブレットを使用している。ちなみに、この文章は、最近、安く入手したSIMフリーのandroidスマホで打っている。タブレットスマホワンセグ機能はない。
テレビはない。ワンセグを見る装置もない。しかし、ワンセグチューナーがある。
これは、どうなんだ?
グレイゾーンっぽくないか?
もし、申請を受けた当局から査察官が派遣されてきて、ガサ入れみたいなことになったら、どうなんだ?
不安がこみあげてきた。
怖い。
あいては公共であって国営ではない、とはいうものの、国家予算を割り当てられている団体だ。
放送内容はともかく、受信料に関しては、納得できない理屈をもちだす団体だ。
たとえば、ホテルの客室にあるテレビ一台一台に受信料を取るかと思えば、一般家庭では何台あろうと、世帯主のぶんだけだ。
私の場合でいえば、地デジもBSも契約していないのに、契約の見直しもない。
そして、フルセグに比べたら不完全なワンセグも受信まで、対象だという。
どうかしている。
どんな状況どんな行動に出るか、ちっぽけなわたくしの脳みそでは予想だにできない。
結局、ブラウザを閉じた。
俺は臆病だ。
この文章の中で、一人称も文末も統一されていないのは、臆病なハートが震えているからです。